現地法人の業務引継ぎのポイント

現地法人の業務引継ぎのポイント

2012年11月(2020年4月17日修正)  元田時男

(1)総務的事項

①BOIへの奨励申請書、奨励証書(事業ごとに発行されているので全部を揃える)。

②会社登記簿:登記証明書、アフダビット、株主名簿、基本定款、付属定款

③会社運営上の書類:株主総会召集状、株主総会議事録、役員会議事録、株主名簿(登記簿の名簿と別に会社としての名簿を保管する義務あり)、株券

④事務所、工場建物の建築許可書(タイには建物保存登記制度がないので、これが持ち主である唯一の証拠となる、図面、見積書も点検)

⑤賃貸工場の場合、賃貸契約書(3年を超える不動産賃貸契約書は登記が必要であることに注意)

⑥土地登記簿原本:2通発行され、一部は所有主、一部は県土地局で保管(双方は理論的には一致するはずであるが食い違うこともある)

⑦工場設立許可、操業許可(変更、拡張の都度、申請、許可を貰っているので、図面も含め全部揃っているか。期限が切れていないか、工場法により立ち入り検査もあることを想定する)

⑧会社印と管理方法

⑨火災保険、従業員保険、車両保険などの証書

⑩業務用資料の整備状況(法令、規則、会議所月報など、タイ語、日本語の参考資料は揃っているか、また、誰にも公開され、有効に利用されているか―社内ミニライブラリ)

⑪公用車管理台帳(私用で使用する場合の処理)

(2)労務人事

①業務責任フローチャート(命令系統が明確であるか)

②就業規則:過去のものも含めて、現在までに告示したもの、出張規定など個別のものを含む、適正に公示されているか。

③労使協定書(過去のものも含めて、署名入りの原本が揃っているか)

④従業員台帳(就職から15日以内に登録されているか、記入項目にもれはないか、離職から2年間の保管義務あり)

⑤雇用契約書(重要な雇用条件が盛り込まれているか)

⑥賃金台帳(従業員の署名があるか、2年間の保存義務あり)

⑦社会保険台帳(適正な源泉徴収を行っているか)

⑧労災保険加入、保険料納付関係書類

⑨各従業員の個人所得税源泉徴収票(適正な源泉を行っているか)

⑩警告書(誰が署名しているか、査問委員会の議事録)

⑪その他人事関係様式(休暇願いなど)は揃っているか、規定通りの決済を受けているか。

⑫研修記録ならびに研修報告、配布資料(個人の所有物になっていないか)

⑬医療施設の整備状況、安全管理者の管理状況(研修報告書)

⑭健康診断とその結果の管理

⑮日本人ワークパーミット(現実との食い違いはないか)、申請、許可一式書類、帰任者の返上受領書

⑯移民局への90日ごとの出頭スケジュール

⑰タイムカード

⑱運転手、雑役の管理(勤務時間の管理など)

⑲毎年1月要提出の労働省に対する雇用状況報告書は揃っているか

(3)会計

①会計業務マニュアル(会計は大事であるから人事の異動があっても大丈夫か)

②月次決算書、年次決算書、年次決算書の商務省への提出文書、受理書(遅延の原因)

③手元現金出納帳の管理状況(合わない場合どう処理しているか)

④銀行預金通帳と元帳の照合(毎月残高証明との照合が行われているか)

⑤仕分帳、元帳、伝票、証憑(租税の時効は10年であるから10年間保存。適正な決済が行われているか)

⑥監査証明書(何か意見が付されていないか、適正意見か、意見にどう対処しているか)

⑦棚卸資産台帳(原価配分法は統一されているか、工場の帳簿,BOI,税関のBis19によるカットストックと照合されているか、棚卸の時期、方法、棚卸損の計上基準、乗用車売却損の処理など

⑧償却資産台帳:幾らの価格以上を資産としているか、取得に要した費用(運賃、据え付け費、試運転費など)を含めているか、償却方法、残存価格の計算

⑨BOIに対する決算書の提出書類、受理書(BOIから指導はなかったか)

⑩会計担当の能力試験、研修を行っているか

⑪原価計算データは揃っているか、税務(移転価格)、アセアンCEPT、日タイ経済連携の特恵関税の原産地証明の元となる

(4)税務

①法人所得税の納付書、納税受領書(中間、年次を含む)

②BOI免税対象事業と非免税事業との区分の基準

③VATインボイス、納付書、還付書、清算書(タックスクレジット)

④法人所得税登録書、VAT事業者登録書

⑤個人所得税納税登録書

⑥従業員に対する現物支給の税務処理

⑦個人所得税の確定申告書、納税証明書

⑧土地建物税(2019年に法律改正)、看板税の納付書、受領書

⑨印紙税を要する書類には印紙が貼付され日付に入った消印があるか

⑩日本人職員の日本給与は正確にタイで合算されているか

(5)シッピング

①船積・通関書類一式:インボイス、パキングリスト、B/L, Airway Bill,TorTor1.2,輸入税納付、受領書など

②Bis 19条によるフォーミュラ

③注文書、受注書、契約書、その他往復文書

④工場における棚卸とBOI、Bis19条に又はBOIによる帳簿との照合はどう行われているか、それを会計元帳にどう反映しているか

⑤ハンドキャリーによるものは密輸入となるので注意

⑥くず、不良品の処理(勝手に処分できない)、BOI,IEAT,国税局の管理下にある

(6)BOI関係

①奨励証書が各事業ごとに揃っているか、各々の法人税免税の期間

②輸出製品用原材料輸入税免税にかかるフォーミュラ

③材料台帳と実際有高に差はないか((3)の⑦と同様)

④法人税免税中のものと免税終了の事業の損益の通算は適正に行われているか

⑤奨励証書に記載された品目と年間生産量は守られているか