Q:当社の現地法人には労働組合がありません。しかし、一部に跳ね上がり職員がいて、工場内で色々画策しているという情報もあります。従って、いつそういう職員が一部の職員と申し合わせて賃上げ要求書を突きつけてくるか不安があります。そもそも要求書は職員の一部だけの合意で成立するものでしょうか。
A:1975年労働関係法では、労働組合が要求書を出す場合は全労働者の5分の1以上が組合に加入していることという条件があります(法15条1項)。労働組合がない場合、または労組があっても全従業員の5分の1に満たない場合は、以下の手続きを要します。
1)要求書に関係する労働者の15%以上の署名が要求書になければなりません(法13条3項)。ここで要求書に関係するということは、例えば事務所内の職員が事務所内の労働環境について要求書を出すのであれば、事務所内の全職員が関係する労働者となります。会社内全員の賃上げを要求するのであれば全従業員の15%以上の署名を集めて要求書につける必要があります。
2)次に要求書には交渉のために7名以内の代表を通知しなければなりませんが、代表は関係労働者で選出する必要があります(法13条3項)。この選出の方法は内務省令1号(1975年5月23日付)があり、関係労働者の集会において誰を代表とするかを合意するか、合意できない場合、希望者がない場合は選挙を行わなければなりません。この選挙は労働調停官に行ってもらうことも可能です。
以上が要求書の成立要件です。この条件を満たさないと要求書は成立しません。
従いまして、まず、要求書が出たら、関係労働者の15%以上の署名が自社の労働者のものか、外部の人間のものがまぎれてあいか至急調べる必要があります。要求書を受理したら、その時点から3日以内に交渉を開始しなければなりませんので(法16条)、社員名簿と突き合わせは至急行う必要があるのです。関係従業員が少なければ問題ありませんが、多い場合は作業が大変です。予てから労働者名簿は整理しておいて直ぐにチェックできるようにしておかないと、チェックしないまま要求書を正式に受理するということになり、それこそ一部の跳ね上りの思うつぼになりかねません。
また、選挙のための集会を時間中に社内で行うのは、多分就業規則で勝手に執務を中断して集会を開くのは禁じてあるはずですから規則違反となることに注意しなければなりません。最近は労働運動の意識が向上していますので、こういうことは少なくなりましたが、もしそういうことが起きれば、規則違反として解雇もありえます。最高裁判例4047-4053/2546(2003年)では、執務時間中に社外で集会を行ったのは、意図的に使用者に損害を与えたとして首謀者7名を解雇したのは妥当としています。
(modified date: 2016/11/28)
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