FAQ:労働組合結成は法的に阻止できない。労組の活用。
A:まず、労働組合結成を阻止するような行動は日本でも「不当労働行為」として禁止されていますがタイも同様であることにご注意下さい。日本の労働組合法では7条において組合員であることを理由に解雇すること、組合結成をしようとすることで解雇または不当な扱いをすることを禁じています。
タイの場合、日本の労働組合法、労働関係調整法の2法に当る法律は「1975年労働関係法」でありますが、その121条、122条で、労働組合活動を妨害すること、組合員であることを理由に解雇すること、組合への入会を妨害する、脅迫により脱退させることなどを不当労働行為として禁止しています。「組合結成を阻止する」という明確な条文ではありませんが、どのような方法で阻止、または妨害してもこの121条、122条に違反することは明白であります。
この2条に違反した場合、同法の158条において6ヶ月以下の懲役もしくは1万バーツ以下の罰金、または両方の併科と定められています。
次に、「労働組合はないほうが良好な労使関係が保てる」というお考えのようですが、果たしてそういえるのでしょうか、考えてみていただきたいと存じます。
一見良好と見える労使関係であっても労働者の不満はあるのではないでしょうか。むしろ、外に出ないだけに内にこもって、あるとき突然爆発する例はタイにおいて枚挙にいとまがありません。不満はいずれ出てくると思っておいたほうが無難ではないでしょうか。
それであれば、むしろ法に則って規律ある労使交渉が行われるためにも労働組合はあった方がいいと考えることも可能かと存じます。
具体的に、労使交渉のルールは「1975年労働関係法」に盛り込まれています。要求書の提出は組合がない場合、要求書に関係する労働者の15%以上の署名を要し、かつ7名以内の代表を労働省令で定められた方法で選出することになっています。組合がある場合は、組合が代わって要求書を提出できますが、その場合関係労働者の5分の1以上が組合員であることが求められています。かつ、労働組合の規約には、かならず、ストライキ指示の手続き、雇用条件協約の承認手続きを含まなければならないようになっており、いずれの場合も要求書提出、交渉、交渉決裂、調停、調停不調、ストライキと、ルールが定められ、法に従わない労使紛争の解決は禁止されているのであります。
以前、このルールに従わない突然のストライキが起きることがよくありましたが、最近は非常に少なくなりました。それは労働運動家、または労働省などによる法の指導がだんだん徹底してきていることの証左でありましょう。労働者側が法に則った規律ある行動に出ることを期待するのであれば、むしろ組合はあった方がいいと考えることもできると思います。そして労使交渉は頻繁に行われた方がいいのではないでしょか。不満が内にこもって爆発するより、不満は早め早めに把握して対応することが肝心かと思います。
最後になりましたが、組合の結成は10人以上の発起人が必要で、労働省に登記し法人格を持つことが要求され、組合を代表する委員は当該組合の組合員であり、出生によりタイ国籍を有し、20歳以上であることが要求されている(労働関係法86条、87条、101条)ことを申し添えておきます。
FAQ:タイにおける時間外勤務の限度
A:1週間の合計36時間以内と定められています。法的根拠は以下の通りです。
タイの労働者保護法24条、25条では必要な場合事前に書面による労働者の承諾を受けて時間外(休日時間外を含む)、休日に労働をさせることができるようになっています。それが日本の三六協定と異なるところであります。そして26条で時間外、休日労働の合計は省令の定める時間数を超えてはならいと定められています。
その省令は「1998年労働者保護法に基づく省令第3号」であり、1週間に36時間を超えてはならないと定めています。これに違反した場合、使用者には6か月以下の懲役もしくは10万バーツ以下の罰金または併科と定められています(労働者保護法144条)。