SME MULTI CONSULTANT ニュース 19号(200302)
タイの法令の新しい話題を簡潔にまとめ、月一回のペースで送信いたします。(西暦 = 仏暦 − 543)
1.タイ政府がコロナウィルスを危険伝染病に指定、昨日(200301)発動:
タイのコロナウィルス対策は、2020年2月末日までは行政機関・医療機関の裁量(ガイドライン)で対応してきたため、対応にばらつきが生じてきました。
その成果は200301現在で、タイ国内の入院患者11人、退院して帰宅30人、死亡1人の合計42人と発表されています(タイ内閣府ホームページ)。
そしてタイ政府はコロナウィルス対策を強化するべく昨日(200301)、コロナウィルスを危険伝染病に指定しました。正式名称は(200229付け官報公示で翌日発効となった「危険伝染病名と主たる症状にかかる厚生省告示第3号」です。
ポイントは、「新型肺炎のコロナウィルス(COVID-19)が、仏暦2558年伝染病法の危険伝染病に指定された」ことです。
タイの仏暦2558年伝染病法は、日本の感染症法(平成十年法律第百十四号 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)と名称・内容が似ていますが、読んで受ける印象が多少異なります。
日本の現行の感染症法では、前文にもあるとおり「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する総合的な施策」であり「感染症の患者等の人権を尊重」と明記されているだけあって、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症の分類ごとに「行政による情報公開と事前説明の徹底」、「勧告から始まる段階的強制(検体の採取や入院、検死、消毒、場所・区域の一時閉鎖等)」、「個人情報保護」、「費用の公的負担あり」のセットをあてはめて構成されています。
一方、タイの仏暦2558年(西暦2015年)伝染病法では、「危険伝染病」「要注意観察伝染病」「原因不明伝染病」の3分類となっています。危険伝染病の指定は今回のコロナウィルス(COVID-19)が14番目となります。過去に指定された危険伝染病(13種類)は、①ペスト、②天然痘、③クリミヤ・コンゴ出血熱、④ウエストナイル熱、⑤黄熱、⑥ラッサ熱、⑦ニパウィルス感染症、⑧マールブルグウィルス、⑨エボラ出血熱、⑩ヘンドラウィルス、⑪SARS、⑫MARS、⑬超多剤耐性肺結核です。
昨日(200301)、コロナウィルス(COVID-19)が危険伝染病に指定されたことにより、これまでの裁量(ガイドライン)に対して法的根拠(行政による強制力も)が加わることになるでしょう。
仏暦2558年(西暦2015年)伝染病法のポイントは下記のとおりです
第5条 伝染病対策官を任命する厚生大臣の権限
第8条 外国の危険伝染病発生地を指定する厚生大臣の権限
第10条 要注意観察伝染病における個人情報保護の保証。しかし危険伝染病・原因不明伝染病では例外あり
第11条 国家伝染病委員会の委員: 閣僚は厚生大臣のみ、あとは全員専門家(関係省庁の局長クラスと医療機関代表者・学識経験者)
第20条 地方伝染病委員会の委員: 知事、関係省庁の県局長と地方自治体代表・地方官僚、医療機関代表者
第23条 国境ワーキンググループ: 関係省庁の担当長(医療局、畜産局、農業技術局、関税局、食品・医薬品委員会事務局、入国管理局)と医療機関代表者
第26条 バンコク都伝染病委員会: バンコク都知事、関係省庁の担当責任者とバンコク都庁官僚、医療機関代表者
第31条 伝染病発生・リスク発生時の伝染病対策官への届出義務者: 住宅の世帯主、医療機関の担当者、検死官、事業所の代表者←(違反者は2万バーツの罰金:第50条)
第33条 世界保健機構(WHO)との窓口: 厚生省医療局
第34条 危険伝染病等発生時の伝染病対策官の権限:
①感染者・リスク者の検査、治療、検死、指定施設での停留・隔離・経過観察、ペット等動物の検査、治療、検死を受けさせること←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
②感染リスク者とペット等動物に免疫力付加処置を受けさせること←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
③感染者の遺体とペット等動物の死骸に対する危険伝染病等蔓延防止の処置←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
④住宅、学校、事業所等、乗物の所有者、占有者、借主に対して危険伝染病等蔓延防止のため物品を処分させること←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
⑤住宅、学校、事業所等、乗物の所有者、占有者、借主に対して危険伝染病等蔓延防止のため動物や昆虫・幼虫の駆除をさせること←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
⑥人々に対して危険伝染病等蔓延を助長する行為の禁止←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
⑦管理区域からの出入りを禁止←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
⑧危険伝染病等蔓延の恐れある住宅、学校、事業所等、乗物への立ち入り検査←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
第35条 危険伝染病等蔓延防止のための知事・バンコク都知事の権限:
①場所の一時閉鎖(市場、飲食店、娯楽施設、工場、集会場、教育施設等)←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
②感染者・リスク者に対する業務停止命令、③感染者・リスク者に対する集会場、娯楽施設、教育施設等への立入禁止←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
第39条 外国の危険伝染病発生地の恐れがある地域からの乗物に対する伝染病対策官の権限:
①到着時刻事前届出←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
②到着時の届出書提出←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
③乗物の国際線が外国の危険伝染病発生地から到着した際に、伝染病検疫検査が済むまでの間、乗物から降りることを禁止←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
④乗物の乗客や荷物、ペット等動物に対する伝染病検疫検査や防疫処置の実施←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
⑤免疫力付加処置前の乗客を入国させることの禁止←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
第40条 第8条により厚生大臣が認定した外国の危険伝染病発生地からの乗物に対する伝染病対策官の権限:
①危険伝染病等蔓延防止のための貿易処置の実施
②乗物機材の一時足止め←(違反者は2年以下の禁固and/or50万バーツの罰金:第54条)
③乗客に対する医師の健康診断、指定施設での停留・隔離・経過観察、免疫力付加処置←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
④管理区域からの出入り禁止←(違反者は1年以下の禁固and/or20万バーツの罰金:第52条)
⑤乗物内にある汚染リスク物品の持ち出し禁止←(違反者は2万バーツの罰金:第51条)
第41条 第40条の諸経費負担者: その乗物の所有者(航空会社・船会社)
第42条 乗物の乗客から感染者が発生した場合の伝染病対策官の権限: その乗客に対する指定施設での停留・隔離・経過観察、免疫力付加処置、費用はその乗客が負担
第47条 伝染病対策官には司法警察職員の権限をも付与
以上の概要となっています。日本からタイへの渡航は難しくなりそうです。
*当事務所の対策状況:
コロナウィルス(COVID-19)対策のため小社では下記の対策を行っております。お客様各位のご協力を賜り、まことにありがとうございます。
まず、原則としてテレビ会議(Web会議)・eメール・電話にほぼ全てを切り替えさせていただいております。対面式の会議は極力控えさせていただきます。
もし、ご来社の場合、下記のとおりとさせていただきます。
①当事務所入室前の体温検査(申し訳ございません。国と医療機関の指導により体温37.5度以上ですとご入室いただけません)
②全室イオン殺菌空気清浄器フル稼働
③消毒ジェル(アルコールとデトル消毒薬のミックス)完備
④会議中のマスク着用義務
⑤緑茶
しばらくご不便をおかけすることなり、誠に恐縮に存じますが、一致協力してこの難関を突破して参りましょう。
以上です(上記は作成した時点でのご参考情報です。実際の運用の
御社のご盛業を!