SME MULTI CONSULTANT ニュース51号(201210)
タイ法令の新しい話題を簡潔にまとめてお伝えします。バックナンバーはhttp://www.thaibiz.jp/?page_id=2551
1.タイのBOIが投資誘致活性化/EV生産拠点化等に向けた投資奨励策を記者発表:
(参考文献: タイ国投資委員会ウェブサイト(タイ語)掲載 201104ニュースリリース第140/2563(Or. 59)号、同BOIインフォグラフィック。なお、201208現在タイ官報未掲載)
2020年末を前に201104、タイ国投資委員会(BOI)の本委員会は、投資誘致活性化のための奨励策を決定した。製造業の投資を回復させるため、電気自動車(EV)関連産業や持続的社会への効率的転換に取り組む事業者を支援する。同時にタイを世界レベルの医療健康ビジネス拠点(Medical Hub)、貿易・投資・生産拠点として投資奨励していく。BOIのドアンチャイ長官は、プラユット首相が議長を務めるBOI本委員会の会議後の談話で、新規認定された投資奨励業種として、高齢者向け病院、高齢者介護、臨床研究事業を挙げた。また継続重点策として電気自動車(EV)の生産、さらに「国際競争の中でタイが世界の貿易・投資・生産拠点の地位を確保できるよう、今後の持続的社会への効率的転換に対応できる事業者を支援していく」と述べた。
高齢者総合ケア業界向け
BOI本委員会では、高齢者介護およびリハビリテーションサービスを新規投資奨励事業として認定した。タイの60歳以上人口は少なくとも1300万人(総人口の二割)と推計されており、2021年以降の高齢化社会への高齢者総合ケアの投資奨励策として①高齢者向け病院事業につき5年間の法人税免税を、また②高齢者介護事業につき3年間の法人税免税を奨励事業者に付与することを決定した。
臨床研究業界向け
加えてタイの医療産業界の国際競争力強化を図るとともに、タイの国家目標である(生産・サービス・研究開発まで完全にカバーする)国際レベルの医療健康ビジネス拠点(Medical Hub)の達成のため、また、タイで実施する臨床研究に対する世界クラスの専門家からの技術移転などタイ医療機関のメリットも重視し、BOI本委員会では、①医薬品開発業務受託機関(Contract Research Organization : CRO)と、②臨床研究センター(Clinical Research Center : CRC)の二業種につき、臨床研究活動の投資奨励策として8年間の法人税免税(金額上限なし)を奨励事業者に付与することを決定した。
電気自動車(電動輸送機器)業界向け
BOI本委員会では、電気自動車(Electric Vehicle : EV)生産の投資促進のため、2018年末の申請提出期限満了後ではあるが、今後もさらなる新規申請受付を再開すると決定した。この新規申請受付では、元々あった電気自動車や電気バスのみならず、電動バイク・三輪自動車・トラック・船舶など電力を動力源にする乗物・輸送機器も含む、多種多様な電気自動車(電動輸送機器)業界向けの奨励策が盛り込まれ、その概要は下記のとおりである。
①電気自動車の製造業: 主な対象はバッテリー式電気自動車(Battery Electric Vehicles : BEV)の生産であるが、ハイブリッド電気自動車の生産にも適用される。
バッテリー式電気自動車(BEV)の生産で投資額が50億バーツ以上の場合、8年間の法人税免税を付与し、さらに研究開発への投資がある場合、追加恩典を付与する(合計で上限11年)。一方、50億バーツ未満の場合、3年間の法人税免税を付与し、さらに下記の指定された条件を実行できる場合、追加恩典を付与する(合計で上限11年)。2022年までに自動車生産の開始。基本的な部品に加え、重要部品も製造する。実際の生産数が年間1万台以上である。研究開発に投資する。
プラグインハイブリッド式電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicles : PHEV)製造プロジェクトの場合、3年間の法人税免税を付与するが、条件として少なくとも3種の電気自動車部品生産を行うことが必要。
②バッテリー式電動バイクの製造業: 3年間の法人税免税を付与し、さらに下記の指定された条件を実行できる場合、追加恩典を付与する(合計で上限11年)。2022年までに生産開始。モジュール段階からのバッテリー生産。トラクションモーターなどの重要部品の生産追加。研究開発に投資する。
③バッテリー式電気三輪自動車の製造業: 3年間の法人税免税を付与、さらに下記の指定された条件を実行できる場合、追加恩典を付与する(合計で上限10年)。モジュール段階からのバッテリー生産。トラクションモーターなどの重要部品の生産追加。研究開発に投資する。
④バッテリー式電気バスおよび電気トラックの製造業: 3年間の法人税免税を付与し、さらに下記の指定された条件を実行できる場合、追加恩典を付与する(合計で上限10年)。モジュール段階からのバッテリー生産。トラクションモーターなどの重要部品の生産追加。研究開発に投資する。
⑤電力を動力源とするボート製造などの造船や船舶修理業種: 8年間の法人税免税を付与する。
これら各種のバッテリー式電気自動車製造業の投資家は、プロジェクト計画をまとめた投資奨励認可申請書を提出しなければならない。例えば、バッテリー式電気自動車プロジェクトやバッテリー製造プロジェクト、 機械の輸入および設置計画、 1〜3年間の生産計画、その他の部品の供給または生産計画だが、特に重視しているのは「タイ国内の原材料生産者(タイ人が総株式の過半数占有)の採用計画」である。
また、BOI本委員会は、電気自動車用の機器・部品製造業向けに4業種の奨励事業区分を追加した。①高電圧ハーネス(High Voltage Harness)、②減速ギア(Reduction Gear)、③バッテリー冷却システム(Battery Cooling System)、④回生ブレーキシステム(Regenerative Braking System)。また、より多くの技術を使用するバッテリー製造工程などの業種向け奨励策も上乗せした。モジュールまたはセルの製造工程がある場合、国内で生産されていない原材料や必須材料の輸入税90%減免を2年間付与する。
なお、既に2017年から2019年にかけて電気自動車製造業では780億9900万バーツ、合計26件の投資案件に対してBOIが奨励認可済みである。うち7件のプロジェクトは生産開始しており、①HEV(ハイブリッド電気自動車)事業では日産、ホンダ、トヨタ、②PHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)事業ではメルセデスベンツとBMW、③BEV(バッテリー式電気自動車)事業ではFOMMとTAKANO。その他、主要部品製造事業の奨励認可済みプロジェクトも14件あり、そのうち10件がバッテリー製造事業である。
専門商社・メーカー商社部門向け ← IPO(国際調達事務所)復活
国際競争の中でタイが世界の貿易・投資・生産拠点の地位を確保していくため、BOI本委員会は、部品・原材料・構成品のグローバル調達拠点となるIPO(International Procurement Office:国際調達事務所)の新規奨励認可の受付再開を決定した。これによりIPOが使用する設備機械の輸入税免除、また輸出を前提として生産に使用される部品・原材料・構成品にかかる輸入税免税を付与する。
該当業種向け ← 「効率向上のための投資奨励措置」の拡充
BOI本委員会は、奨励事業者の「(生産・サービスの)効率向上のための投資奨励措置」を拡充することを決定した(従来は製造業に限定していたがサービス業も対象とする)。また、これにより持続可能な国際基準(持続可能性認証)さらに農業部門なども包括していく。例えば、食品安全管理システム(ISO 22000)標準や持続可能な森林の管理システム(ISO 14061)標準などである。
なお、従来の「生産効率向上のための投資奨励措置」適用事業においても、引き続き2022年末まで受付期間を延長して、下記4種類の付属措置の投資奨励恩典を付与していく。該当するプロジェクトに対し、法人税率の半分を3年間減免する。
①省エネ、代替エネルギー使用、環境負荷軽減のための投資奨励措置
②生産効率向上のための機械入れ替えに対する投資奨励措置
③生産効率向上のための研究開発およびエンジニアリングデザインへの投資奨励措置
④農林水産業の国際基準向上への投資奨励措置
2.タイ政府がコロナ対策で非常事態宣言(全国)を210115まで延長:
「タイ全国を対象とする非常事態宣言の延長(8回目)にかかる告示(201124官報公示、201201施行)」のポイント:
200326に施行した非常事態宣言は7回の延長により201130までとなっているが、ここまでタイが官民を挙げて新型コロナウィルス(COVID-19)感染拡大防止に努力してきたことにより、世界保健機関(WHO)から表彰されるほどの成功となっている。しかしながら世界中で感染者数と死者数が増加し続けており、一度は感染対策を緩和した国々が相次ぐ二次感染拡大により再度の対策強化を余儀なくされており、これでは景気回復を図ったものの却って経済負担増と社会混乱を招く結果となっている。さらにタイ隣接国において感染急拡大が食い止められない状況となっている。引き続きタイ政府は公衆衛生基準による出入国者検疫を法律に基づき徹底実施しているが、正規のルートではない自然の国境地帯を通ってそのままタイに不法入国する者が増加し続けており、国内感染者が発症後に発見された事例も出ている。これらは国民の秩序と安全、公衆衛生・経済活動・社会生活の安定に対する脅威となっている。折しも乾季に入り、感染対策の難易度も上がり、年末年始のタイ人・外国人の移動も盛んとなり、さらには多数の国際競技会がタイで開催されるという懸念事項も多くなっている。
したがって、国民の健康と生命の安全を第一に守るため、そして政府が統制のとれた迅速な政策を効率的に実行するためには、引き続き非常事態宣言が必要と判断した。仏暦2548年 非常事態下の行政統治にかかる勅令第5条に基づき、201123閣議決定により首相が非常事態宣言を201201から210115までの期間再延長する。
201209 タイ厚生省によるコロナ現況発表:
タイ国内の新型コロナウィルス(COVID-19)発生状況は累積感染者4,151人(うち201209新規感染25人)、回復3,880人、治療中211人、死亡60人。タイ入国を希望する外国人向けASQ(Alternative State Quarantine: ホテルでの隔離検疫)対応ホテルの登録情報とサービス情報は、タイ厚生省健康サービス支援局COVID-19緊急対応センターのウェブサイトで公開されている。
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*タイ政府のコロナ対策概要と日本人ビジネスマンのタイ渡航(201210更新):
2020年1月以降の新型コロナウィルス(COVID-19)危機の中、タイでは首相・主要閣僚・公衆衛生学専門家と各省庁局長クラスが中心となり、200312付け「内閣府通達第76/2563号」により設立された「ศูนย์บริหารสถานการณ์การแพร่ระบาดของโรคติดเชื้อไวรัสโคโรนา 2019 (โควิด – 19): Center for COVID-19 Situation Administration、タイ政府COVID-19対策本部(CCSA)により、人口10万人あたり感染者0.2人の時点で、200326非常事態宣言を発令して40以上の法律を統合運用し、徹底的な対策(防疫・感染防止・治療)に着手しました。タイ政府は通常予算の組み替えに加えて1兆バーツのCOVID-19対策国債を発行し、その6割をCOVID-19直接対策(防疫・感染防止・治療)に、4割を経済復興に充てて各種プロジェクトを推進中です。別途、タイ中央銀行も9千億バーツの金融政策(5千億バーツの中小企業向け新規ソフトローン等+4千億バーツの金融機関安定策)を採っています。非常事態宣言(+夜間外出禁止令)が功を奏して感染爆発防止に成功した200503からは段階的に「国民の経済、社会、安全保障の負担を軽減するための規制緩和措置」を進めてきており、タイ国内では国内感染者ゼロ記録を更新し続け、7月上旬時点で第5期まで規制緩和が進み、順調なら追加の緩和(トラベルバブルの実施等)に進む計画も出されました。しかしながら、懸念される二次三次の感染拡大に対処していく予算上の余裕がないタイ政府は、外国人の入国につき苦肉の策で「経済復興に役立つ人材を優先的に入国させる」ため、第5期緩和でVIP外国人優遇枠を設定した直後、200710にラヨーンで発生した「感染エジプト軍パイロットの勝手な外出事件(翌日帰国)」など複数の事件が裏目に出てしまい、200714の閣議でVIP外国人枠は廃止され、外国人全員に14日間(実際は15泊16日)の隔離検疫が義務付けられました(当時、ラヨーン県では200校以上が臨時休校、またホテルの予約キャンセルなど被害が拡がりましたが、幸い二次感染は発生しませんでした)。その後、11月以降はミャンマーからの不法入国者などの新規感染者がタイ北部で多数確認されています。
201210現在(第8期)、首都圏ではほぼすべての店舗(撤退店舗を除く)が通常営業に戻っていますがマスク着用やソーシャルディスタンスは義務付けられています。なお、現時点では入国規制措置(民間定期旅客便は飛行禁止中)により、1万人を超える日本人ビジネスマン(200703タイ外務省発表)のタイ入国に遅れが生じています。現在、「タイのビジネスビザ申請」と「日本発タイ行き特別便の渡航手続」は非常に複雑で、「前提としてビジネスビザ等を取得の上、「バンコク到着後の隔離検疫措置(ASQ)対応ホテル(バンコクの120ホテルが15,470室を提供中)」と航空券を予約の上、タイ大使館領事部・領事館に「COVID-19対応保険ほか関係書類一式」をeメール提示・登録し、OKがでたらeメールでCOE(入国保証書)が発行され、出発前72時間以内にPCR検査してからようやく搭乗・・。バンコクに到着したら空港から14日間(実際は15泊16日)のホテル隔離検疫に直行(PCR検査陽性判定の場合は予約したASQ指定病院に入院)」という流れになっています。8月は週一便、9月は週二便でしたが10月~12月は週三便の特別便で日本人ビジネスマンを受け入れる体制です。
*当事務所の対策状況:
コロナウィルス(COVID-19)対策のため小社では当面の期間、下記のとおり万全対策を行っております。お客様各位のご協力を賜り、まことにありがとうございます。
お客様対応は「テレビ会議(Web会議)・eメール・電話・ビジネス宅配便のみ」とさせていただいております(対面式の会議は非常事態宣言解除までの期間、原則として自粛させていただきます)。
しばらくご不便をおかけすることとなり誠に恐縮に存じますが、一致協力してこの難関を突破して参りましょう。
以上です(上記は作成した時点でのご参考情報です。実際の運用の際は再度ご確認のほどお願いいたします。なお、西暦 = 仏暦 – 543です)
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御社のご盛業を!日タイ経済産業連携と両国の永続的な友好関係を祈念して!
SME MULTI CONSULTANT CO., LTD.
川島和士 (KAZUSHI KAWASHIMA)